こんな活動じゃ成果なんて残せない・・・私のいる意味って何だろう?
JICA青年海外協力隊JICAの隊員にとって、これは誰もが1度は経験する悩みなのではないでしょうか。
- 配属先は全然やる気ないし、
- 自分の知識や技術を教えるなんてレベルの話ではない
- 自分が来た意味なんてない
私自身、隊員の頃はそんな風に思っていました。
確かに、青年海外協力隊では、技術移転における結果を残すことはなかなか難しいと思います。
さらに言うと、移転した技術を末永く現地に定着させるなんて、それはもう不可能に近いでしょう。
任期を終えて、今でも私はとある発展途上国で生活をしているのですが、
今になって「協力隊の活動も、意味が無いなんてことはない」と実感したことがあります。
それは協力隊をはじめとする現地住民に密着した日本人なら誰もが確実に残せる成果です。
先に結論から言ってしまうと、誰もが確実に残せる成果というのは
日本人に好意的な感情を持ってもらう事
日本人を好きになってもらうという事ですね。
・・・な~んだ、そんなことか・・・・
と思う人もいるかもしれません。
まあ・・・結構よく言われている事ですからね。
全然難しい事ではないし、キレイゴトみたいに感じる人もいるかもしれません。
ただ、この「日本に対して好意を持ってもらう」という事がどれほどスゴイ事なのか、
実感というレベルで理解している人、結構少ないんですよね。
それでは・・・
日本人に対して好意を持ってもらう事の大切さを、これから説明していきたいと思います。
協力隊に無意味な活動などない① 人をラベリングする事
まず、人を属しているグループで判断する、いわゆる「ラベリング」という事について簡単にお話します。
「人を人種や肌の色だけで判断することは良くない」
世間一般的にはそう言われていますよね。
【アフリカ人は怠け者だ】【中国人はマナーが悪い】
このような考え方は間違っている。私自身、ずっとそう思ってきました。
そもそもアフリカ人ってなんやねん・・・という話は一旦置いといて・・・・
働き者のアフリカ人もたくさんいるし、優しくて素晴らしいマナーの中国人もいます。
そもそもマナーの悪い日本人なんてたくさんいますよね。
その国の友達が出来たりすれば、「○○人だから○○だ」、という固定観念は聞いていてあまり気持ちの良いものではないかもしれません。
ですが、
人間はまず最初に、そうやって人間を人種やグループでラベリングして判断する生き物だ
という事を押さえておきましょう。
これはもう、本能のようなものだと思います。
間違っていると分かっていても、色々な人がいるから一括りにしてはいけないと思っていても、
人間は基本的にその人の人種や職業、見た目などで勝手なイメージを作ります。
そういうものなのです。
協力隊に無意味な活動などない⓶ 日本人であることの恩恵
海外で生活していると、日本人だというだけで得をすることがたくさんあります。
隊員の皆さんはよくわかると思いますが、特に途上国では中国人と間違われることが非常に多いのです。
そして中国人は基本的に好印象を持たれていない場合が多いのですが
言葉を選ばずに言えば、基本的に嫌われているのですが、
日本人だと分かった(中国人ではないと分かった)だけで相手が態度を変えるケースが結構あります。
私自身、今住んでいるマンションを借りる際に、
「日本人だからデポジット1か月分でいい」と言われました。
中国人なら3か月取っているという事です。
日本人は信用があって、中国人は信用がない。
この大家さんの場合は、「中国人は部屋の壁などを平気で汚すから」という事です。
世界的に見ても日本人のイメージは非常に良いという事は皆さんもなんとなく理解していると思いますが、
日本人というだけで信頼されて、日本人というだけで得をするという事は実際多数あります。
もしかしたら私がメチャクチャ部屋を汚す可能性もありますし、
中国人でも毎日掃除をしてピカピカに使う人だっているでしょう。
それでも、人間は日本人だから、中国人だから、と人を国籍で判断してしまうのが良くも悪くも現実なのです。
協力隊に無意味な活動などない③ 信頼を得る事
このような個人レベルでの、日本人に対する信用の大きさというのは、
それまで彼らが出会った日本人の態度や行動が彼らの信用を得るに足るものだったからではないでしょうか。
日本製品の質の良さに信頼があるから、人間まで信頼する、という事にはならないですよね?
せいぜい金持ち、とか、テクノロジーに強い、といったイメージを抱く位でしょう。
もちろん国家レベルで親日国と呼ばれる国は、親日国になったきっかけとなる歴史的な背景や大きな事件があり、
その後の教育が影響を与えているという事もあるかもしれません。
しかし、その陰には日本人一人ひとりの素晴らしい立ち振る舞いが必ずあったはずです。
ODAでこの国に何億円投じたというニュースよりも、
日本からやってきた若者に色々教えてもらった、友達になって思い出を作ったという体験の方が
その人個人に与える影響はずっと大きいのではないでしょうか。
そして、そのほんの小さな友好関係というのが積み重なって積み重なって、「日本人は信頼できる」という現在の状況につながっていったのではないかと思います。
一人一人に出来る事は確かに超ちっぽけです。
あまりに超ちっぽけ過ぎて、どうでもよい事だと感じるかも知れません。
ですが、この超ちっぽけな事が無ければ、
現在世界の人たちが持つ日本人のイメージはまた違ったものであったかもしれません。
派遣国に在留している日本人の多くは、ローカルの人たちとかかわりあう事はあまりありません。
ローカルの人たちと毎日顔を合わせ、話をし、ギュウギュウのミニバスに乗り、一緒に怒ったり笑ったり出来るのは、やっぱり青年海外協力隊の隊員なんですよね。
協力隊に無意味な活動などない④ ちっぽけを積み上げるには
日本人友好的な感情を持ってもらう
これはそれほど難しくない事だと思います。
ただただ日本人として恥ずかしくないように振舞い、
ただただ真剣に活動を行う。
これに尽きると思います。
- 気持ちよく挨拶をするとか、
- 笑顔を見せるとか、
- ゴミはゴミ箱に捨てるとか、
- 就業時間に仕事を始めるとか、
- 席から立ったら椅子をしまうとか、
- 相手の良くない態度にはきちんと注意をするとか、
- 借りたものは返すとか
- 自分の机は整理整頓するとか
- 日本の事を話してあげるとか
- 自分の経験を話してあげるとか
そういう事が意外と大切だったりします。
一人でも二人でも、あなたの行動の何処かに何かを感じてくれたら、
もうそれだけでも活動の成果だと思っていいと思います。
任期を終えて
技術移転なんて何もできなかった。
現地に生活を改善することなんてできなかった。
それでも、あなたが去ったあと、必ず現地の人は次に会った日本人にあなたの話をします。
何十年も前に協力隊の先生に教えてもらった日本の歌を、今でも覚えているという人は実際にいるのです。
超ちっぽけ過ぎてそんな成果では満足できないかもしれませんが、(私自身、当時はくだらねぇと思っていました)
その、ナミブ砂漠の一粒の砂ほどの「ちっぽけ」の長い年月をかけた積み重ねがあったからこそ
私はデポジット1か月でマンションを借りられた訳だし
私が日本人だと分かれば急に態度を軟化させる人もいる訳ですよね。
別にマンションを安く借りるために信用を作る訳ではないですけど、
たまには日本人で良かったと思える出来事もあるものです。
それに、日本人の株が上がって嬉しくない日本人はいないでしょう。
これは超ちっぽけだけどメチャクチャ大切な事。
そして、
ローカルに一番近い距離で生活する青年海外協力隊だから出来る事じゃないのかなと
活動を終えて数年経った今、改めて実感しているのです。
まとめ
という訳でまとめです。
活動で何も成果を出せなかったと思っても、もしあなたが活動に真摯に取り組んでいるのなら
日本人の事を知ってもらい、日本人の事を好きになってもらうという小さな成果は必ず残せる
これはキレイゴトではなくて、
真剣な気持ちで活動に取り組んでいるのなら、意味の無い活動なんて本当に無いと思います。
その国の国民一人ひとりの立ち振る舞いが、やがてその国の国民のイメージと信用を作り上げていきます。
もちろん逆もまた然り。
常日頃、現地で「チャイナチャイナ」とバカにしたように声を掛けられている皆さんなら、
多くの中国人の立ち振る舞いによって、中国人に対して現地にどんなイメージが作られていったかよくわかると思います。
その国の国民と言っても、いい人も悪い人もいます。優しい人もそうでない人もいます。
確かにそれは正しいですが、多くの人は、その国の国民のイメージ、先入観を持っているという事も忘れてはいけません。
たとえ活動で何もできなくても、どんなにやる気をなくしてしまっても、
最低限「日本人はとんでもないヤツらだ」なんて思われないように
適切な行動、立ち振る舞いをすることは忘れないで欲しいものです。