青年海外協力隊がぶるかる「マンパワー問題とは」
JICA青年海外協力隊という事業の役割は、技術移転とされています。
かみ砕いて説明すると、
配属先の抱える問題を解決するための能力や技術を配属先の人たちに教える
という事ですね。
つまり、問題を解決するのはあくまでも配属先の人たち。
自分がやっても意味はないという考え方があります。
例えばどこかの途上国に資金援助をして橋か何かを作りましょう。
中国は作業員を自国から連れてくるので、現地人は技術を学ぶことが出来ません
一方、日本は現地の人を採用して作業してもらうので、仕事と同時に技術も覚えることが出来る。
こんな風に言われていますが、考え方としては同じことですね。
ですが、実際は
- 授業を押し付けられたり
- 作業を押し付けられたり
- 自分たちでできるような雑用を押し付けられたり
という事も少なくありません。
本来自分たちでやるべき仕事を振られる、という感じです。
そして肝心の現地人たちは特に何をしているわけでもない。
テストの試験監督や採点なんてしに来たんじゃないのに・・・
配属先の人がやらなければ意味が無いのに・・・・・
私はあなたたちを楽にさせるために来たんじゃないのに・・・・
という事になります。
どうして隊員はマンパワーにされる?
どうしてこのような事が起こるのでしょうか。
2つ原因をあげてみたいと思います。
原因① 要請票を鵜呑みにし過ぎている
青年海外協力隊にはそれぞれ「要請票」というものがあります。
そこには配属先の詳細や、どんな問題を抱えている、という事まで記載されています。
例えば、
国策でIT技術向上を掲げている当該国では高いプログラミング技術を持つ人材育成を目指しているが、充分な経験を持つ指導者が足りておらず、指導者のITリテラシーの向上を期待されている。
みたいな感じでしょうか。
ですが、実際に現地に行ったらパソコンすらなかったり、というケースもあると思います。
パソコンが無い・・・というのは少し極端かもしれませんが、現地の状況と要請票にはそのくらいの差はあります。
どうしてこんなことになるかと言うと
受け入れ先の人たちが真剣ではないからだと思います。
現地で要請を受けるには、企画調整員が調査に行って責任者とも話をするでしょう。
こういう場合、相手側は基本的に見栄を張って良い事しか言いません。
あくまで私の経験上ですが、肩書のある人に対しては笑顔でもっともらしい事を言います。しかし・・
実際に隊員を受け入れるカウンターパートにも、せいぜい「日本人来るから」と伝える程度でしょう。
何も話していないというケースも十分考えられます。
「こういう技術を持つ人が来るから、我々はこういう技術を学んで、こういう問題を解決しよう」
こんな話し合いは一切行われないかと思います。なので、何しに来た?思われても何ら不思議ではありません。
あくまで想像ですが、
このくらいの事は見なくても容易に想像がつくレベルだという事です。
JICA側も配属先の人たちの言う事を鵜呑みにしているはずはありませんが、どうしようもないでしょうね。
本当は調整員が実際にしばらく現場に入って判断するのが一番いいと思うのですが
実際にそんなことしたら、要請の数はグンと減るかと思います。
一応要求することは強く要求すると思います。
それこそ、「隊員はマンパワーではないし、お金も持ってこない。技術移転のために来る」という事も強調すると思うのですが、
いかんせん現地人が真剣に聞いていない、真剣に聞いているフリだけする、という感じなのかな、と思います。
もちろん、JICAの人たちも立場上、そういう状況を理解して要請を取るという事もあるかと思いますが。
いずれにせよ、要請票なんてただの建前に過ぎません。
鵜呑みにしない方が賢明ですね。
原因⓶ 技術移転に固執し過ぎている
そういう訳なので、配属先が真剣に技術移転を求めているというケースは稀だと思います。
よほど配属先に情熱にあふれている人がいない限りは難しいでしょう。
そんな状況で、技術移転!技術移転!と肩肘張っても上手く行く確率はかなり低いと思います。
私は青年海外協力隊の2年間で技術移転なんてほぼ不可能だと思っていますが、
その原因は
「相手が真剣じゃないから」
これに尽きると思います。
逆に言えば、相手が本当に真剣になれば出来る、とも思います。
カウンターパートが情熱を持って、同僚も前向きで、配属先のトップも協力を惜しまず、という状況なら、
あなたの仕事はあなたの技術を教えるだけ。お金や道具がないのはアイデアで何とかする。
これが派遣前、応募前の人たちにとっての青年海外協力隊のイメージだと思います。
ですが、そういう状況にならないのが圧倒的に大多数なのが現実です。
そういう状況を作れなければ、技術移転もクソもありません。
だって相手は「別に教えて欲しくない」って思っているんですから。
協力隊のマンパワー問題 解決策は?
解決策①
マンパワーにされないためには、あなたの使命を相手がきちんと理解する必要があります。
ところが、あなたの使命なんて本当は誰も求めていないので、「丁度良い使いっぱしりが来た」という事になる訳ですね。
「配属先のニーズ」、とよく言いますが、
配属先が抱える問題点と配属先が考える問題点は別物です。
大抵の場合、
配属先の抱える問題は「配属先の人たちの姿勢」で、
配属先が考える問題は、多くの場合、「金」でしょう。
金さえあれば何とかなる。金がないのは国の経済が悪いからだ、と
自分たちには全く非が無いと思っているからタチが悪いのです。
配属先の抱える問題は日本人なら誰が見てもすぐにわかると思いますが、
それを現地の人たちに話して、素直に受け入れさせることが出来ますか?という話です。
それが出来たら多分、解決すると思います。
これが解決策①です。
解決策⓶
従って、青年海外協力隊に求められる本当の能力は、
「相手に自分たちの雑魚さを素直に認めさせ、情熱に火をつける能力」
だと思います。
しかし、ほとんどの人はそんなことできません。それほど簡単なことではないかと思います。
何度も言いますが、
「自分たちのこの状況を何とかしたい!助けが欲しい!」
なんて誰も思っていないからです。
経営が傾きかけている会社の社長が虎の子の金を使ってコンサルティングに依頼するのとは訳が違うのですね。
なので、
技術移転というのは一度忘れて、
いっそ自分がマンパワーであることを受け入れるというのも一つの方法かと思います。
これが解決策その②です。
まずはそういう状況を受け入れ、
雑用でもなんでもこなし、
自分という人間を知ってもらい、
仲間として受け入れてもらう事で何か糸口が見つかるかもしれません。
- 役に立たない現地語を覚えたり
- 大して興味もないその国の事を勉強したり
- 旅行に行ってその国の事を好きになることが
どうでもいい事のように見えて、実はとても大切な事だったりするものです。
まとめ
今回説明したような配属先の状況で、技術移転を目指すのはとても難しい事だとは思います。
しかし、無理だからと言って最初からあきらめてしまうのも違うかな、と思います。
想像とは大きくかけ離れた現実に悩むのも協力隊の醍醐味だと思いますが、
マンパワー云々でモヤモヤするのは時間の無駄だと思いますので、私なりの意見を述べさせてもらいました。
余談になりますが、「人にやる気を出させる」「他人の情熱に火をつける」というのは
どんな組織にいても必要な能力ですよね。これがある管理職とない管理職では成果にも雲泥の差があると思います。
今回私も、協力隊に本当に必要な能力として挙げましたが、
やる気を出しさえすれば、途上国のほとんどの問題は解決する位に思っています。
私自身、人にやる気を出させるというのは苦手でしたが、現在は管理職という立場ですからね・・・・
何とかしなくては、と思って手に取ってみた教材を貼っておきます。
この教材ではやる気を出させるターゲットが子供なのですが、
言い方悪いですけど途上国の人たちは子供みたいなところがありますからね。
大人相手だとハードルが高くても、子供相手なら・・・という部分はあります。
途上国の人たちにやる気を出させるという任務も、今後のための練習と思えば気が進むかもしれません。
この教材も練習にはちょうどいいと思いますので、良かったら参考にしてみて下さい。