今回は「大使公邸料理人」をテーマにお話します。
近年はマンガやテレビドラマなどでも取り上げられることが多くなってきた「公邸料理人」ですが、
このブログで取り上げる理由としては、青年海外協力隊の料理系の職種の帰国後の進路として「公邸料理人」を目指す方が多いからですね。
公邸料理人と言うと「食の外交官」なんて言われますので一流の料理人にしかなれないというイメージを持つ人も多いかと思いますが、実は全くそんな事はありません。
意外と情報が少ない公邸料理人ですが、気になる応募情報や実際のお仕事についてお話していこうと思います。
公邸料理人の概要 期間や仕事の内容は?
そもそも公邸料理人とは?
公邸料理人、というのは海外で展開する日本の在外公館(日本国大使館・日本国領事館など)の公館長公邸で働く料理人ですね。
大使や総領事の自宅では、現地企業や役人、他の国の大使など様々なゲストを招いて会食やパーティー、レセプションが行われますので、その料理を担当することになります。
もちろん日本人が招かれる場合もありますし、国によっては青年海外協力隊の隊員が招待される事もあります。
とは言え、そのような会食やパーティーは毎日あるものではありません。大体月に6~7回程度といった所です。
それ以外の日は何をしているかというと、基本的には公館長夫妻のまかない作りですね。
業務には食材の買い出しや在庫管理なども含まれますが、仕事量としてはそれほど多くはありません。
どこの国でも「天皇誕生レセプション」というのが秋に行われますが、500人規模の料理をほぼ一人で準備することになりますので一年の中でも大きな山場はその位でしょう。
公邸料理人の期間は?
大使や総領事の任期は大体2~3年ですので、公邸料理人の期間もその位とされています。
公館長が異動になるタイミングで契約を終了するケースがほとんどですが、そのままその国の新任の公館長に就くケースもあれば、公館長が次に赴任する国に一緒についていくというケースもあるようですね。
そのあたりは、その国に派遣される料理人がいるかどうかや、公館長との関係性によっても変わってくるかと思いますが、割と融通を利かせる事が出来るみたいです。
ただ、大使の任期というのは2~3年が一般的であるというだけで、必ずしもそうなるとは限りません。突然辞令が下る事もありますので、契約が切れる時期の予測が付きにくいとうデメリットはあるかと思います。
ちなみに、大体毎年7月~8月あたりに公邸料理人の募集が増える傾向があるようです。
応募を考えている人は、6月ごろまでに登録を済ませるようにしておくといいかもしれません。
公邸料理人になるにはどうすれば良い?
公邸料理人応募の流れ
公邸料理人になるには、まずはじめに国際交流サービス協会に求職登録表を提出し、公邸料理人候補として登録する必要があります。
国際交流サービスの公邸料理人担当に、求職登録表を送ってくださいとメールすれば必要書類を送ってもらえますので、必要事項を記入して送付すればOKです。
ここでは
- これまでの経験
- 専門とする料理
- 対応可能なジャンル
- 希望勤務地域
- 現行の給料額と希望する報酬
などを記載します
公館長の異動などで公邸料理人を募集することになったら、まずは公館長が国際交流サービス協会に料理人紹介の依頼を出します。そこで協会が該当者の求職票を選抜し、勤務地や派遣時期、待遇などを料理人に伝えて本人に意思確認をします。
もし本人が派遣希望をする場合は公館長と面接をし、問題が無ければ採用です。
渡航の為の手続きを進め、赴任するという流れになります。
公邸料理人も公人扱いですので、公用旅券がもらえます。
公邸料理人の応募資格について
公邸料理人にも応募資格はありますがハードルはそれほど高くありません。
・調理師免許所持
・調理師免許がない場合は、調理従事歴5年以上
これだけです。年齢制限もありません。
応募資格の証明書は登録時に提出する必要はありませんが、赴任時に「調理師免許」もしくは「調理業務従事証明書」を提出しなければなりません。
調理業務従事証明書は勤務先に記入してもらい、社判も押してもらう必要があります。
語学に関しては特にスコアを等を求められることはありませんが、現地での業務に語学力は必ず必要になります。
語学スコアを持っている方は申告しておいた方が有利かと思います。
また、応募書類には「推薦状」も同封されています。これは必ずしも提出する必要はありませんが、自分の調理技術を証明してくれる人がいれば、推薦状を書いてもらう事で選考で有利になる可能性はあります。
公邸料理人の待遇ってどうなの?
公邸料理人の給料
気になる公邸料理人の給料ですが、
前述の通りまずは自己申告して、公館長からの提示に基づいて決める事になりますのでそれぞれ違います。
アメリカの領事館で27万円程度という話を聞いたことがありますが、アフリカや大洋州のような開発途上国では危険手当的なものが上乗せされると考えていいかと思います。
額面で30万円前後となると、あまりいい待遇とは言えないと思うかもしれませんが・・・・
実はそんなことはありません。待遇としてはかなり手厚いと思っていいでしょう。
理由としては「公邸料理人は生活費がかからないから」です。
まず、住まいは基本的には大使公邸内になりますので家賃も水光熱費も全くかかりません。
食費だって・・・毎日大使の料理を作る訳ですからね・・・自分の分も合わせて作ってしまうと考えるのが自然です。
もちろん外に遊び歩けばそれなりにお金はかかるかもしれませんが、開発途上国だったら夜遊ぶ場所なんてありませんし、外務省が定める「特定不健康地」に勤務の場合は休暇旅行費の補助があります。
公邸料理人の休日について
公邸料理人の休日は週1日とされています。
しかし、仕事内容から考えれば実働時間はそれほど多くありません。
公邸で会食があれば夜遅くなる事もありますが、日本の飲食店勤務を考えたら天と地ほどの差があるでしょう。
ポイントは、大使はいつも公邸で食事するとは限らない、という事です。
他の国の大使館から会食やパーティーに招かれることもあれば、地方や外国に出張することもあるでしょう。
そのような場合は基本的には休みになります。
仕事量だけで比較すれば、日本の飲食店やホテル勤務に比べると「おいしい仕事」と言えるかも知れませんね。
公邸料理人という仕事の問題点
ここまで聞くと、公邸料理人という仕事は
- 応募のハードルが低い
- お金を溜められる
- 勤務時間も短い
といったメリットがありますが、もちろんデメリットもあります。
デメリットというより問題点と言うべきか・・・
それは、
公館長とそのご夫人のキャラクターによってストレスの溜まり方が全然違う
という事ですね。
公館長やその奥さんの性格が自分と合わなかったらかなり毎日がキツくなると思います。
外務省のお偉いさんはともかく、海外在住で暇を持て余した金持ちの夫人がどういうキャラクターをしているか、想像してみて下さい。
あくまで私の聞いた話ですが、奥さんの方に問題があり(料理人と合わない)退職してしまう人もいるみたいです。
マンガやドラマに出てくるような・・・そうですね・・・PTA会長の奥様みたいなモンスターみたいな人、結構多いらしですよ・・・・
こういう人って「料理人は何でもできて当たり前」とか思っていますからね。
- テーブルセッティングにうるさい
- 塩などの分量などにうるさい
- 料理の提供の仕方にうるさい
みたいな事も多いと思います。
「エサじゃなくてご飯でしょ!!」みたいな、動物愛「誤」を絵に描いたような人もいると聞きます。
こういう人達を上手くいなせる人や、可愛がられるタイプの人は問題ないかと思いますが、口下手で不器用な人だと苦労することが多いかもしれませんね。
「大使の嫁」は思わぬ目の上のたんこぶになりがちですので覚えておきましょう。
公邸料理人 まとめ
公邸料理人という仕事は、その実態があまり知られていないからかそれだけでもかなりのネームバリューがあると思いますので、いつかは独立して店を出したいと考えている人なら一度はやってみるのも悪くないと思います。
「元○○国の公邸料理人」というだけで、何も知らない一般人には十分通用する肩書になるでしょう。
原価や売り上げという概念がないという点でも、調理師としてはかなり特殊な仕事ですが、考え方によっては時間をかけて料理を追及することも出来るかもしれません。
今回は公邸料理人について、内容や待遇などを簡単に紹介しました。
不明点がある場合は、国際交流サービスに問い合わせてみると良いかと思います。