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JICA青年海外協力隊 スリランカ要請の取り止めについて

2019年6月6日、JICA青年海外協力隊のスリランカ要請が全て取り下げられました。

理由としては、2019年4月21日に発生した同時多発テロ事件の後、今後の治安が不透明だから、という事ですね。

 

今回はこの要請取り止めの件をもう少し深堀して、

不測の事態による派遣取り止めや国外退去などについてもお話していきます。




 

スリランカ連続爆弾テロ概要

ご存知の方も多いと思いますが、事件の概要をざっくり説明します。

 

2019年4月21日、スリランカ最大の都市コロンボを含む国内8か所で同時多発自爆テロが発生しました。

ターゲットはキリスト教の教会や高級ホテルなどです。

当日は西方教会の復活祭(イースター)に当たる日であり、過激派イスラム組織による犯行と見られています。

このテロによって日本人1名を含む258人が命を落とし、500人もの人が負傷しました。

スリランカ政府はこの事件の後、イスラム聖職者200名を含む600人の外国人を国外追放しています。

 

これまでスリランカでは圧倒的なマジョリティである仏教徒が、少数派であるムスリムを迫害する状態が続いていました。

同様にキリスト教に対しても京都や教会への襲撃などが増加しており、こちらも加害者の多くは仏教徒とされています。

 

 

にも関わらす、イスラム過激派がキリスト教を狙って仏教を狙わなかった事などから、いささか謎が残る事件だと言われています。

 

 

事件後には政府によるSNSのシャットダウンが行われました。

情報を拡散しないように、という事なのでしょうが・・・横暴ですよね。

 

 

別の国ですが、このような政府によるSNSの停止措置は私自身も経験したことがあります。

ここからはあくまで私の経験ですが、

 

 

政府のガソリンの値上げ政策に反発する国民の大規模デモが発生し、学校も町の店も軒並み閉鎖しました。

デモ隊と警察の衝突で死亡者も出ています。

 

 

最初はインターネットが遮断され、次第に普通のブラウジングのみ可能になりましたがフェイスブックやYouTube、ワッツアップなど主要なSNSが使用不能の状態が1週間程度続いたかと思われます。これは政府命令であり、自分たちにはどうすることも出来ない旨のメッセージが通信会社から送られてきました。(チャージした通信料返せと思いました)

 

こういう場合は大使館から自宅待機勧告が出ると思いますので、家でおとなしく過ごすことになります。

まあ、外出しようと思えばいくらでも出来ますが、さすがにそういう気にはなれませんよね。

 

国外に安否確認の連絡が出来ないのはもちろんですが、私の場合は町の状況がどう、という事より

時間を持て余し過ぎて、とにかくヒマで苦痛だった記憶があります。

ざっくり説明。スリランカってどんな国?

スリランカはインドの南に浮かぶ島国ですね。

 

 

私は行ったことがありませんが、

首都の名前が「スリジャヤワルダナプラコッテ」というとんでもなく長い名前だという事は子供の頃面白がって覚えたので、知っていました。

通常は「Kotte」と略されるようですね。長すぎますから。

 

 

スリランカの大きさは北海道よりも少し小さいくらい。人口はおよそ2100万人です。

 

 

1983年から2009年まで26年に及び、政府とタミル人反政府武装勢力・タミル・イーラム解放の虎(LTTE)との間で内戦が行われていました。

内戦終結後の2010年以降は急速な経済発展を続けています。

 

公用語はシンハラ語とタミル語で、シンハラ人、タミル人、ムーア人など様々な民族で構成される多民族国家ですが、仏教徒であるシンハラ人が全体の70%を超えています。

 

スリランカには仏教の聖地やパワースポットと言われる場所が多く、日本人にも非常に人気の高い観光地でもあります。

「シーギリヤロック」

 

 

「セイロンティー」って聞いたことがあると思いますが、

これはスリランカ産の紅茶です。

ちなみにセイロンというのは、スリランカの旧国名です。

他にもインド文化の影響も受けているため、スパイス類なども豊富です。

 

 

テロ後、スリランカ隊員は? 他の国で似たようなケースは?

スリランカには青年海外協力隊も派遣されていましたが、テロ発生の後は国外退避となったようです。

そしてそのまま、残念なことにながらスリランカに戻る事は叶わなかったようですね。

 

現地の人たちと良い関係を築いていた方たちにとっては非常につらいことだったかと思いますが、

今回のテロでは日本人の被害者もいましたし、アメリカ大使館の職員も巻き込まれて死亡しています。

 

 

青年海外協力隊にとって一番大切なことは無事に日本に帰る事ですので、それを果たせただけでもありがたい事なのかもしれませんね。

 

 

国外退避になった場合、残りの任期が一定聞あれば改めて他の国に派遣されることも出来るはずですが、

残りの任期が少ない方はそこで任期終了という形になったのではないかと思います。

 

 

仮に残りの期間が1年程度あったとしても、他の国に再派遣というのはなかなか悩ましい所ですよね。

青年海外協力隊は派遣されて1年が経った頃にようやく現地にも慣れて活動が上手く行き始める事が多いですから。

 

 

また、まだ派遣前の候補生はこのようなケースでは派遣国変更の措置が取られます。

本来予定されていた派遣時期よりも多少遅れる事になりますが、JICAは基本的に他の派遣先が見つかるように善処してくれるので派遣そのものが取りやめになるという心配は要らないかと思います。

 

 

このようなアクシデントはいつ起こるか分かりませんし、仕方のないことですね。

任期短縮や任地変更などは不本意な事ですが、身の安全を守るためですので素直に受け入れるしかないでしょう。

 

 

 

実は、今回のような「要請取り止め」というのはそれほど珍しい事ではありません。

私の派遣国にも当時国外退避になった国から振替で派遣されてきた隊員がいましたし、

私自身の協力隊の2次面接でも私の職種の中にあった国の一つが要請取り止めになった事を聞かされ、その国への派遣を希望していた他の受験者が残念がっていたのを覚えています。

 

 

ちなみに、その国はチュニジアです。現在も派遣されていないのではないかと思います。

アラブ圏は情勢が不安定でこういったケースが多いかもしれません。

我々日本人には宗教の問題というのはなかなか理解することが難しいですよね・・・私も5年以上海外で生活していますが、未だに理解できません。

 

要請取り止めや国外退避はテロだけではなく、自然災害、国内の大統領選挙、クーデターなど様々な理由があります。

※近年クーデター(未遂)が発生したトルコやジンバブエでは国外退避措置は取られなかったようですが、ジンバブエは要請取り止め、派遣振替措置が取られたと記憶しています。

 

ジンバブエの例だと、

現地で隊員は活動しているのに新しい派遣は停止という措置でしたので、

この辺の判断基準は正直よくわかりませんが、そのようなケースもある、という事ですね。

まとめ

自分の派遣国で実際にテロや事件が起こると、自分の目の前で人々が死んでいくという事も現実として起こり得ます。

自分の身を守るために国を去るというのは、隊員にとっては心苦しいものだと思いますが、

青年海外協力隊はそういう危険な世界に身を置いているという事もまた現実という事ですね。

 

 

要請取り止めや派遣停止、国外退去は仕方のない事ですが、

大きな決断をして応募し、せっかく合格して派遣された青年海外協力隊ですので、

JICAは本人の希望に沿うように可能な限り対応を考えてくれるはずです。

 

少なくとも、青年海外協力隊として派遣されるという目標は叶うのではないかなと思います。

 

スリランカに行きたかった応募者の方や、派遣を楽しみにしていた訓練生、頑張って活動をしていたスリランカ隊員の方にとっては気の毒なことですが、気を取り直して次のステップへと進んで欲しいと思います。

 

このような痛ましい事件が少しでも無くなれば良いのですが・・・・