今回は「フェアトレード」をテーマにお話していきます。
最近、仕事でフェアトレードに関する調査を行っていました。色々本を読んで、人に話を聞いて、ちょっと勉強しました中で感じたことなどを書いてみようかなと思います。
発展途上国で生活していると、貧困や労働搾取などの問題はより身近なものとして感じることがあります。
こういった国と日本をつないでいるモノの一つとして、フェアトレードというものがあり、日本でも近年認知度が高まって来てますね。
青年海外協力隊、特にコミュニティ開発で要請内容に一村一品運動と書かれているような活動では、フェアトレードに関心のある人も多いかと思いますので、何かの参考にしてもらえたらと思います。
そもそもフェアトレードとは?
そもそも、一口にフェアトレードと言ってもその形も考え方も様々なので、どれか一つが正しいわけではなく、定義することは難しいようです。
まあ、「公平な取引」ということなので、途上国等の立場の弱い労働者が不正に不利益を被らないように、という事なのですが、途上国の人に現金収入を得る機会を与える手段として使われている場合もあります。
一般的には
- 命の関わる危険な作業
- 不当に低い賃金
- 児童の労働
など、劣悪な労働環境で働いている人がいる中で、先進国の私達はその恩恵で豊かな暮らしをしている。
それはおかしいんじゃないのか?というやつですね。
日本だと、スタバとか、イオン系のマックスバリュとかがフェアトレードの取り組みをしているようですね。
コーヒーやチョコレートなんかがフェアトレード商品が多いのではないでしょうか。
コレってフェアトレードなの?
フェアトレードで検索を掛けてみると、
アフリカ等のクラフト製品や布、服、アクセサリーなどがいっぱいヒットします。
こういうのはどちらかと言うと、現地生産者に収入を得る機会を作る手伝いをしようという試みが多いようですね。
青年海外協力隊でも行われる一村一品運動もこれに当てはまりますね。
現地で生産しているものを日本でも売ってみよう。つまり、販路を広げよう、というものです。
昔、NGOでボランティアをしていたとある女性が、プエルトリコの刺繍製品を買い取って身近な人に販売したのがフェアトレードの始まりと言われていますが、コレに近い感じですね。「新規参入促進型」と言われるそうです。
私が気になるのは、このような途上国の製品が何でもかんでも「フェアトレード」って謳われて売られている気がするんですよね。
一つ、例を挙げて見ましょう。
ジンバブエの伝統楽器に「ムビラ」というものがあります。
このムビラというのはオルゴールの原型になった楽器、なんて言われていますけど、日本人にもジンバブエに足を運ぶムビラ奏者が要るみたいですね。
それはさておき・・・・本題です。
このムビラも、日本のECサイトでフェアトレードという肩書き付きで販売されています。
ジンバブエでもムビラの価格はピンキリですが、割と質のいいムビラを買うと100ドル程度、と聞いています。
でも、そのフェアトレードのムビラは日本では2~3倍の価格で売られているんですよね・・・
他のアクセサリーや民芸品も同じように、日本で購入すると
「え?こんなに高いの?」
というような製品、結構あります。現地の価格を知っているだけになおさらね・・・
個人的には、日本で売れれば現地生産者の稼ぎになるし、別に問題ないと思いますが、消費者は何を思って買うんでしょうか。
最近では「フェアトレード製品だから」という理由で商品を選ぶ人も増えてきているようです。
フェアトレードは消費者が普段の生活の中で、気軽に、出来る範囲で世界の貧困や労働問題を解決する役に立てる方法ではあります。
少しイヤな言い方をすると、「手軽にいいことをして、いい気分に浸れる」ということですね。もちろん、その製品自体に価格の価値を感じているなら別ですけど。
フェアトレード製品ってやっぱりちょっと割高で、それでも「役に立ちたい(もしくは、自分が気持ちいい気分になりたい)」と思って、わざわざ割高な製品を買う人もいる訳ですよ。
でも、フェアトレードを謳って販売しているけど、現地の状況や売上の内訳とかを公表、発信していない所も結構多いんですよね。
そして、購入する側も購入した時点で完結して、実際に現地の人がどう言う状況で、この商品を買う事でどうなるか、という事までは掘り下げない場合が多い。
ここで私が言いたいのは・・・・
だったら「バラマキ」の支援と同じじゃん
という事なんです。
フェアトレードの名を使えばそれだけで商品を買ってくれる人がいて、その売上がどのように使われているのか、というか、本当にフェアトレードなのかどうかすら気にしている人が一体どれくらいいるんだろうなって思うんですよ。
別に誰も損しないから目くじら立てるようなことではないかも知れませんけど、
フェアトレードという名前を使う以上は、売上や利益の内訳や現地の人がどんな風に困っているか、などを発信したり、知ろうとする義務があると思うんですよね。
じゃないと、募金やバラマキと同じになってしまうよ、という事です。
「フェアトレード」という言葉自体が購入する動機になり得るという人がいて、でもやってることは単に現地の製品を適正価格で仕入れて日本で利益(もしくは経費)を上乗せして販売しているだけ。
開発途上国の製品なら何でもかんでもフェアトレードという言葉を使う現状もちょっと気になりますね。
フェアトレードの問題は?
個人でやっている小規模なフェアトレードでも、大企業が関わっているような規模が大きいフェアトレードであっても、
その取引によって現地の人がどれほど恩恵を受けているか、ということは公表すべきだし、追求すべきだと思うんですよね。
フェアトレードでは仲介の不透明さが問題になることが多いらしく、
実は生産者の末端の末端では危険な作業をしていたり、労働搾取が行われていてもフェアトレード団体が把握出来ないケースも現実にあるようです。
国際的なフェアトレードの統一基準を作って、フェアトレード認定ラベルなんかも作っている「国際フェアトレードラベル機構(FLO)」という団体がありますが、
やはり本当の末端の状況を目で見て確認するのは運営費などの問題からもあまり現実的でなく、目が届くのは末端の労働者を取り仕切っている組織の代表者(もしくは仲介者)止まり、ということも珍しくないようです。
なので、その取り仕切っている現地の組織が不正をしていても、危険な労働をしていても、FLOは把握出来ない場合もある、ということですね。
せっかくフェアトレード製品を販売しても購入しても、本来のフェアトレードの目的である不正な労働搾取や児童の労働などは全然改善しない、というケースがあり、これはフェアトレードに関わる人なら知っておくべき問題ではないかと思います。
フェアトレードの世界にも不正はある
いわゆる「賄賂」を代表するような不正はどこにでもありますよね。先進国の日本だってあるんだから、開発途上国なら不正、袖の下なんて日常茶飯事です。
大切なのはそれを抑止する監視の目や法律、警察の捜査力などだと思うんです。
途上国では権力を監視するメディアや国民の力がまだまだ弱いので、政治でも公的な期間でも不正がバンバン起こります。
警察の捜査力もないので犯罪もたくさん起こります。
フェアトレードも同じで、先ほど説明した仲介者や代表者の不正をなくすには消費者の監視の目が大切なのでは、と思う訳です。
例え規模が小さくても、目に見える成果が出ていないとしても、現地の状況や進捗を伝える事と追求することはそういった意味でも大切なのではないでしょうか。フェアトレードの名前を使っている以上は・・・・
何のためのフェアトレード?
バラマキ型の支援とフェアトレードの違いは、生産者が自分の力で自立出来るように応援するかどうか、という部分だと思います。
JICAでもバラマキ型の支援では、被援助グセがついてしまう、という考え方がありますよね。
実際に政府のお偉いさんでも、自分たちは援助を受けて当たり前みたいに思っている部分があるので、被援助グセはもう既に付いているのですが・・・・
バラマキだろうが、フェアトレードだろうが、いずれにせよ目的は現地の環境を改善することには違いないでしょう。
だったら、消費者が自己満足のためにフェアトレード商品を購入し、現地の状況に全く関心がないような状態だったら、関心を持たせる努力はすべきだと思うんですよね。フェアトレードという名前を使っている以上は。
この便利なWEBサービスがたくさんある現代だったら、他にもいい方法はたくさんあるでしょう。そのあたりを上手く使えば、状況を変えられる可能性は劇的にアップすると思うんですよ。
むしろ、ネット環境やネットリテラシーがあれば、現地の人にだって自分たちで解決できる手段もあると思います。
現代では一村一品よりも、そのあたりの知識を身に付けさせる方が大切なのでは?とさえ思います。
フェアトレードをしている人はどんな人?~まとめ
今回のポイントとしては
- 開発途上国の商品はなんでもかんでもフェアトレードとう言葉を使い過ぎている
- なぜなら、「フェアトレード」という言葉だけで商品も買う人も増えてきているから
- フェアトレードという言葉を使う以上は、現地の状況をしっかりと発信する義務がある
- 現地生産者の状況をオープンに発信して知ってもらう事は不正を抑止する役目もある
- フェアトレードという言葉に捕われ過ぎず、WEBサービスを利用した現代ならではの方法も模索すべき
という感じですね。
私自身、フェアトレードをしたことも、商品を買ったこともありませんが、
アフリカやアジアの途上国で作ったものなら何でもかんでもフェアトレードという名前を使い、大して考えずに製品を購入する・・・・そんな人がどれくらいいるのかわかりませんが、
今回フェアトレードについて、特に個人規模で運営している人達を調査をする中でそんな風潮を感じ、疑問を感じた、という話でした。
しかしながら、
フェアトレードの事業をしている人は、実際に現地に足を運んで、なんとか力になりたいと思い、善意で始めたという人が圧倒的に多いようです。
冒頭で、ムビラが現地価格の2~3倍の値段で売られていると書きましたが、アフリカの楽器を使って儲けよう、というのではなく、実際はそれくらいの価格で売らないと事業が成り立たないのだと思います。
簡単に大きな利益を挙げられるような事業ではない上に、現金の無い相手に原料代を先払いにしたり、無償のボランティアに頼ったりと事業者側がリスクを背負ってギリギリの運営しているという現実もあります。
それでは事業者の方が先に疲弊してしまいますよね・・・・日本人は自分の事を犠牲にしてしまいがちですが、継続性がありません。まずは自分が満足した生活を送る事を第一に考えるべきでしょう。
一方でフェアトレードという名前を使っていなくても、現地の環境改善に貢献している事例はたくさんあります。
現地の伝統技術に上手く付加価値を付けて、ブランド化して、、、というようなケースですね。
もちろん簡単な事ではありませんが、フェアトレードという言葉に頼らずに商品の価値で勝負するのが一番健全だとは思います。
今はなんとか支援したい、という気持ちを、自分を犠牲にすることなく形にしやすい時代だと思いますので、活動でフェアトレード事業をしようと考えている人はこのあたりを念頭に置いて、お互いが幸せになれる計画を立てて欲しいと思います。
最後になりますが、今回フェアトレードに関する調査をする上で参考にした書籍を紹介しておきます。
フェアトレードは素晴らしいシステムのように見えますが、実際には色々な問題を抱えている事もちゃんと知っておいた方が良いかと思います。