無事に協力隊の試験に合格し、派遣国が決まったあなた。
次はいよいよ70日にも及ぶ派遣前語学訓練の開始ですね。
なんとか合格はしたものの、イマイチ語学に自信がない人は、
- 授業ってキビシイのかな・・・・
- 周りの人たちはどの位出来るのかな・・・
- 落第して派遣取りやめになったらどうしよう・・・
- 訓練が終わるころにはちゃんと喋れるようになっているのかな?
そんな不安を抱えているかもしれません。
結論から言うと、
JICAの説明では
70日間の訓練で、現地で活動が出来るレベルまで語学力が上達しますので心配いりません
といった類の事が書いてあるかと思います。
冷静に考えればわかりますけど、それはウソです。
という訳で、今回はJICA青年海外協力隊の派遣前語学訓練について、
【語学習得】に焦点を当ててお話します。
青年海外協力隊・派遣前語学訓練の概要
青年海外協力隊では合格後、派遣前に約70日間の語学訓練が行われること割と一般的に知られている事だと思います。
派遣される任国や習得する語学に応じて
福島県の二本松訓練所
長野県の駒ケ根訓練所
のどちらかに振り分けられます。
ざっくり言うと
アフリカの英語圏、東南アジア、アラブ圏は二本松
アフリカのフランス語圏、大洋州、中南米スペイン語圏は駒ケ根
という感じですが、例外もあります。
訓練所での生活は語学学習以外にも生活班でのアクティビティや委員会の活動、様々なイベントがあります。
何よりそこで出会った同期の訓練生との関係は協力隊が終わった今でも続いており、
私にとっても一生ものの財産になったと思っています。
が、今回はあくまで【語学習得】にフォーカスしていますので、訓練所での生活はまた別に記事で紹介していきます。
ちなみに私は二本松訓練所でしたので、今回お話するのは基本的に二本松での話です。ご了承ください。
クラス分けテストとホーム・テクニカルクラス
まず入所時に行われるのが語学力チェックのテストです。
TOEICのようなリスニングやリーディングの筆記試験、語学講師と1対1で話すスピーキングの試験があります。
このテストの目的は「クラス分け」です。
青年海外協力隊の語学訓練 「ホームクラス」
テスト結果を参考に、大体同じ位のレベルの訓練生で4~6名程度のクラスが作られます。
このクラスを「ホームクラス」と言います。
1クラス当たりの人数はその隊次全体の訓練生の数に応じて異なるかと思います。
私の時は最大6人、最小4人で1クラスでした。
語学の授業はこの「ホームクラス」を中心に行われます。
基本的には月曜~金曜日の午前中はこのホームクラスで授業というスケジュールになります。
ので、訓練中に一緒に過ごす時間が一番長いのはおそらくこのホームクラスのメンバーでしょう。
派遣されて次第に疎遠になっていくかどうかは・・・訓練中に培った絆によるかもしれません(笑)
私たちの時は海外在住経験の長い方や帰国子女の方など英語が堪能な人は2階の教室、
それ以外は1階の教室という感じでした。
また、英語がかなり苦手な人たちが入る「ボトムクラス」(非公式)はクラス当たりの人数が少ない傾向があります。
こんな感じで、自分のクラスの人数が他のクラスよりも少なかったら自分の英語力は訓練生の平均より下だと思った方がいいでしょう。
一応宿題も毎日出ますが、テキストの問題を解く、という程度で大した量ではありません。
ホームクラスでは遠足さながらの所外レッスンもあります。
青年海外協力隊の語学訓練 「テクニカルクラス」
ホームクラスの他に、もう一つ「テクニカルクラス」というものがあります。
これは同じ職種や似たような職種の人たちが集まり、その職種特有の専門的な英語を学習するクラスとされています。
スポーツ系、IT系、家政や栄養士系など様々です。
テクニカルクラスでも4、5人程度の構成になるかと思いますが
こちらのクラスでは訓練生の英語レベルはバラバラです。
テクニカルクラスの授業は午後に行われますが、午後は語学以外の講座やイベントが行われることも多いので
コマ数はホームクラスほど多くはありません。
また、このテクニカルクラスでは模擬授業やワークショップのロールプレイングなどの授業が多く、
準備に追われるのはコチラのテクニカルクラスの方だと思っていいでしょう。
青年海外協力隊の語学訓練 周りの語学力のレベルは?
英語のレベルは思った以上に・・・
さて、英語が得意ではない方にとってひそかに気になる疑問。
ということについてお話しします。
本来は自分の英語力を上げる事だけを考えていればいいんですけど、周りと比べてしまうのが人間なのかもしれません。
僕から見た青年海外協力隊の英語力はハッキリ言って「かなり低い」です。
もちろん流暢な英語を話す人もいますが、全体で見れば少数派。そういう人は2階の住人です。
ほとんどが「英語が苦手な人」だと考えていいと思いますので、
試験に合格する位のレベルなら特に気後れすることはないと思います。
私自身、応募時のTOEICスコアが400点強だったのですが、
自分から見ても、自分と同程度か、むしろ出来ないんじゃないか、と思える人の方が多かった気がしますね。
入所前は一番下のレベルを予想していましたが決してそんなこともなく、拍子抜けでした。
この話で私が言いたいことは、みんな大して勉強してきていない、という事ですね。
私は相当自信がなかったので、派遣が決まる前から英語の勉強はかなり時間をかけてやってきました。
大学を出たばかりの新卒の子でも、英語が全然出来ない人はたくさんいます。
というより、ほとんどの人は「英語に慣れていない」状態で訓練に参加しています。
要するに、ほとんどの人は皆さんと同じように、
英語力に不安を抱えながら応募し、合格し、不安を抱えたまま訓練に参加して任国に旅立っていく訳です。
英語以外の言語の人たちは?
一方、英語以外の、例えばフランス語やポルトガル語、その他アジア圏の言葉を学習する人たちは、
かなり苦戦を強いられると思っていいでしょう。
ほとんどの人にとってはほぼ初めてからスタートする訳ですので、
2か月足らずでは日常会話レベルでさえ、達するなんてどう考えても無理ですよね。
それでも出発の日は刻一刻と迫ってくる訳ですので、やるしかないですね。
活動をしていく上で一番大切なのは語学だと私は思っていますので、とにかく時間を惜しんで勉強するしかないと思います。
英語圏とそれ以外の言語の人たちとでは、訓練の印象はかなり違うはずです。
英語圏以外の国への派遣が決まったら、(その言語が初心者であれば)覚悟して猛勉強した方がいいと思いますが、
英語圏でなくても意外と英語が通じるので、英語メインの活動になるケースも少なくないようです。
このあたりはちょっと難しい所ですので先輩隊員などから情報をゲットしておいた方がいいかもしれませんね。
語学力を理由にした訓練所クビはあるの?
訓練中には大きな試験が2回あります。
中間試験、期末試験と思っていただければいいかと思います。
ここでの試験成績によっては赴任が延期になる場合があります。
実際、私の時には1名だけ、英語力を理由に退所となった例がありました。
まあ、これは相当稀なケースだと思います。よほど英語力に問題があったのでしょう。
何故かというと、大して英語が得意ではない僕の目から見ても
「英語全然ダメだな・・・赴任されてもやっていけるのかな?」
と思えるような人たちも、ちゃんと試験をパスしている訳ですから・・・
逆に言うと、そのくらい英語力に問題があっても試験に合格することが出来る、とも言えますね。
協力隊の訓練って規律に厳しい、というイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。
実際に細かいルールがたくさんありますけど、「それも大目に見ちゃうの?」というようなるルール違反を許してしまうケースは多々ありました。
「一見厳しいようで、かなり甘い」
これが私の訓練の印象です。
ちなみに、「退所」というのはあまり珍しいことではありません。
参加した訓練者全員が無事に訓練を終了できることの方がずっと珍しいことです。
多くの場合は自己都合による辞退やケガのようですね。
よっぽどのことがない限りはクビになることはありませんし、ケガや語学を理由に退所になった場合でも、後の訓練に参加するチャンスはあります。
私の時の場合では、ケガで退所が1名、英語力で退所が1名の計2名退所でした。
どちらも、後の隊次でもう一度訓練に参加して無事に派遣されました。
JICA(JOCA)の人たちは、不測の事態が起こっても何とか派遣できるように配慮してくれますので、そこは安心してください。
語学訓練で英語力は伸びる?
授業の内容は?
最初に言いましたが、青年海外協力隊の募集では、
「英語力に自信がなくても70日の訓練があるから心配いりません」
「訓練後には任地で活動できるだけの英語力が身に付いています」
といった文言を目にすることがあると思います。
しかし、たったの70日で劇的に英語がペラペラになるようなことはありません。
まあ、普通に考えたらそんな魔法みたいなメソッドなんてある訳ないですし・・・
初心者レベルの内容も多く、特殊な訓練という事は全くない
24時間英語漬けかというと、全くそんなこともない。日本語を話す機会の方が多い。
という訳で、肝心の語学訓練の授業内容ですが、一般的な英会話教室と同じと思っても差し支えないでしょう。
内容はかなり初心者向けです。訓練生の英語レベルから考えたら、当然ではありますが・・・
一つ、劇的に変わることがあるとすれば・・・
それは「英語に慣れる」という事だと思います。
訓練生のほとんどは英語に慣れていない状態で入所してきますので、
英語を人前で披露するのが恥ずかしい
英語で話すと緊張する
という人が多いと思いますが、
訓練が終わればそのような英語に対する恥ずかしさや躊躇は消えてなくなるかと思います。
英語に慣れ、遠慮なく英語で会話することが出来ればその後の上達にも違いが出てくるからです。
そういう意味では語学訓練が全く意味の無いものだとは思っていません。
当時の私にとっては、非常に有意義であったと今でも思っています。
語学訓練を受けるポイント
学習レベルは自分次第
先ほど、授業は普通の英会話スクールと同じだと言いましたが、自分の努力次第ではもっと高度な英語を学べるチャンスはいくらでもあります。
訓練所内には語学の先生がたくさんいますので、時間を見つけてどんどん話しかけていきましょう。
宿題やテキストなどは基礎的な内容ばかりですので(道案内や時計の読み方など)
早い段階でスパートをかけて、ちゃっちゃとマスターしてしまいましょう。
まずはとにかく英語を使って英語に慣れる事が大切です。こういう場合は積極性がモノを言いますので、
とにかく恥ずかしがらずにしゃべる事。
そうすればおのずと自分の弱点が見えてくるはずです。
英語の効率的な学習法などはその後で考えれば良いかと思います。
日本人にも英語で話そう
教室がある研修棟に行くと、「Speak your target language 」(だったかな?)という張り紙が目立つところに貼られています。
その場所ではみんな日本語は使いません。
逆に言うと、その場所以外では、みんな日本語しか使いません。
真剣に英語力を磨きたいなら、基本的に自分の学習言語で話すべきなのですが、やっている人は意外といませんね。
これは私の予想ですが、
本当はやらなくては思っているが、恥ずかしくてなかなか自分からは言い出せない、
という事もあるかと思っています。
ちなみに私は同じ任国の同期と話すときは基本的に英語でした。
日曜日などは英語縛りにして過ごしました。
訓練終了後、二本松から自宅に帰る電車の中でも英語で会話をしていました
日本人と英語で話すメリットは
自分の英語を聞かれることに抵抗がなくなる
という事ですね。
このサイトでも繰り返し言っていますが、
英語コンプレックスの日本人にまず必要なのは、英語で話すときの恥ずかしさをなくすことです。
周りの訓練生に、英語縛りを提案してみれば以外とすんなり受け入れてくれると思います。
なぜなら、ほとんどの隊員は語学力アップに対するモチベーションが高いからです。
逆に言うと、そのくらい「英語に対する恥ずかしさ」は根深いという事かもしれません。
まとめ
今回は青年海外協力隊・派遣前訓練を英語・語学にフォーカスしてお話ししました。
訓練で学ぶのは英語だけではありません。
なので、語学の勉強以外にもやらなければならないことがたくさんあります。
が、活動で一番大切なスキルは語学なのは間違いありません。
ファシリテーション能力とか、その他色々あっても語学が無ければ役に立ちません。
いかに語学の勉強時間を作るか、という事も非常に大事なのですが、それはまた改めてお話しします。
今回のポイントは
という事ですね。
もし訓練が決まっているのなら、出来るだけ勉強はしておきましょう。
英語に関しては訓練ははっきり言って楽勝ですが、ゴールはそこではありません。
活動や、その後の事も考えるなら
語学習得は長い目で見て、時間をかけて確実に勉強を積み重ねていく必要があります。
語学訓練で勉強できるから、とか、
英語圏に2年間住むから、とか
そんな考えでいると、2年間が終わっても大して英語力が伸びていない、という事も全然あり得ますので覚えておきましょう!