青年海外協力隊 派遣人数の推移
「青年海外協力隊 派遣人数の推移」
(グラフ引用 JICA海外協力隊)
青年海外協力隊が初めて派遣されたのは1965年。
当時の年間派遣人数は100人程度でした。
グラフをご覧になってもらえばわかりますが、それから徐々に派遣人数は増えていきます。
ピークである2009年度の派遣人数は1708人。応募者数は約4000人です。
グラフを見ると、そこからドーンと一気に人数が落ちているのが分かりますね。
その後は一時盛り返したものの、減少傾向が続いています。
直近の2018年度の派遣人数は1029人。応募者は約2000人と、ピーク時の約半分にまで落ち込んでいます。
事業仕分けにより青年海外協力隊に支給される手当が大きくカットされたのが2009年ですので、この時期に派遣人数が激減している理由としては納得できるかと思います。
今回はコチラのニュースを読んで記事を作成しているのですが、記事内では以下のような意見が見られました
- 交際協力に関わりたいが、青年海外協力隊には興味がない
- 現在は国際協力の選択肢が増えている
- 国内にも取り組むべき課題が多い
これらの意見に対して、考察していきたいと思います。
参考記事
1965年12月、青年海外協力隊の第一陣が、ラオスへ飛び立った。以来54年、4万人を超える協力隊員が約90カ国で活動して…
国際協力に携わりたいが青年海外協力隊には興味がない
参考記事の中には
「国際協力に関わりたいが、青年海外協力隊には興味がない。あらかじめ決められたレールに乗るのではなく、ゼロから自分でニーズを汲み取って団体を立ち上げる方がやりがいがある」
という意見がありました。
・・・・正直、全く参考にならない意見という印象ですね。少なくとも、国際協力に関してあまり関心を持ってない人の意見でしょう。
確かに自分で団体を立ち上げる方がやりがいがあるかもしれません。
しかし、自分で団体を立ち上げたいと思うほど国際協力に関心があるのであれば、むしろ青年海外協力隊は打ってつけの制度だと思いますよ。
現地のニーズをゼロから汲み取るには、当然現地に足を運んで一定期間滞在する必要があります。
ちなみに短期間の聞き取り調査で現地が抱えている本当の問題を見つけることは難しいと思います。
なぜなら、現地の人たちは
「政治や経済さえ良ければ問題は解決する。自分たちは何も悪くない」「お金があれば解決する」と思っているからです。
ところが実際はその人たちの生活態度や考え方、能力に問題がある場合が多い。
現地人の思っているニーズと現地が抱える本当の問題は全然違う、という事ですね。
本当の問題は、ある程度の期間現地の人たちと密着して生活しなければなかなか見えてこないものだと思います。
タレントがテレビの企画で途上国に学校を作り大々的に取り上げても、
その後運営が立ち行かなくなって結局現在は役に立っていない
フェアトレード製品を購入して貧困問題に貢献した気になったものの、実際の生産者の状況は全く知らない
非常にわかりやすい例ではないでしょうか。
この点に関して、青年海外協力隊には
- 2年間現地に足を運んで、じっくりと現地のニーズ(と本当の問題)を汲み取ることが出来る
- 現地の人たちとのコネクションを作ることが出来る
- 滞在費がかからないどころかお金ももらえる
というメリットがあります。
将来団体の設立を目指して、調査の一環として参加するには青年海外協力隊はむしろピッタリの制度ですし、
実際にそういう目的で参加している隊員も少なくありません。
確かに現在はインターネットを通じて簡単に世界中の情報を得られる時代ではありますが、
実際に現地で生活してみると、いかに日本人が間違った情報を鵜呑みにしているかが良くわかります。
国際協力なり、ビジネスなりで必要な情報というのは現地に行かないと分からない事だらけです。
2年間という期間は長いと感じるかもしれませんし、派遣国を自由に選択できないというデメリットもありますが、派遣国の希望を出すことは出来ますし、正直な自分の目標を面接で口にしても問題ないでしょう。
元協力隊の意見としては
青年海外協力隊は国際協力、というよりも
青年海外協力隊は国際協力を目指す人のためのステップ
として考えた方が自然だと思います。派遣中は本番ではありません。あくまでも本番は派遣終了後という事ですね。
それに・・・・青年海外協力隊は全くもって「あらかじめ決められたレール」ではありません。
はたから見るとそのように見えるかもしれませんが、派遣されればそのレールが幻という事にすぐに気が付きます。
要請内容なんて所詮は建前。実際はかなり自由度が高過ぎて、何をしたらいいのか分からない位です。
だったら自分が帰国後にやりたい事の為に時間を費やしてもいいのではないでしょうか。
国際協力の選択肢が増えた
参考記事の中には
国際協力に関わりたければ、青年海外協力隊以外にNGOもたくさんあるし、ビジネスとして国際協力をしている人も増えている
という意見が見られました。これは確かにそうですね。
まず、近年海外への距離が非常に近くなり、アフリカなど昔は未知の世界だった地域へも気軽に足を運べるようになりました。
昔は海外渡航の金銭的なハードルが高く、海外に憧れを持つに留まる人が多かったと思うのですが、今ではLCCの登場などによりそのハードルはかなり下がっています。
アフリカの企業にインターンに来る学生さんも多いですしね。
必ずしも青年海外協力隊である必要はないと思います。
(個人的には、学生さんが途上国にインターンのは履歴書に書くことを増やす目的にしか見えません。途上国体験という意味では良いと思いますが、あまり途上国ならではの仕事をしているという感じではありませんよね。)
ここで理解して欲しい事は、青年海外協力隊でしか経験できないものがあるという事です。
NGOの活動(と言っても色々あると思いますが)と青年海外協力隊で出来る事は全く違うと思います。
それをしっかりと理解した上で進路を決めるべきだとは思いますね。
青年海外協力隊参加のメリットについてはコチラの記事をどうぞ
仕事を捨てて青年海外協力隊に行って、何かメリットあるの? 青年海外協力隊とは何か?と言われて 2年間発展途上国に行って、ボランティア活動をしてくる という漠然としたイメージしか思い浮かばない人はたくさんいるでしょう。 […]
JICAの説明会やそこに登壇する青年海外協力隊OB(OV)の体験談は、基本的にキラキラしたキレイなことしか言いません。
大体が困難にぶつかって最終的にはハッピーエンドで終わる、美しいサクセスストーリーに仕上がっています。
なので、青年海外協力隊についての一般的なイメージは私の経験とは大分かけ離れています。
もちろん私の意見が全てではなくあくまで一面に過ぎないかもしれませんが、このサイトはJICAや説明会では語られない青年海外協力隊の一面を、実際の経験に基づいてお話することが主旨ですので参考にしていただければと思います。
主張の内容は繰り返しになりますが、日本にいながら考える国際協力と、実際に現地で生活して考える国際協力は全く別物です。
私は青年海外協力隊は国際協力をしているとは思っていませんが・・・・
何も知らずにNGOに入って組織の一員として活動するのもいいと思いますが、
実際に協力隊を体験して様々なNGOを知り、自分なりの国際協力を考え、
それから自分に合った活動をしているNGOを選択するのも一つの方法だとは思います。
国内にも取り組むべき課題がある
参考記事では
東日本大震災後派遣人数が減少している事を受け、あえて海外には出ずに国内で山積みになっている問題に取り組むべきと考える若者が増えている
という意見も見られました。
やはり、「青年海外協力隊=海外の発展途上国の抱える問題解決に取り組む」
という認識が強すぎるようですね。
確かに青年海外協力隊はそのような事が目的となっていますがあくまでも全て建前で、現実はそういう問題解決という次元ではありません。
問題解決を目指すという大義名分はありますが、本当に問題解決をしたいと思っているなら他に良い方法がいくらでもあると思います。
途上国の問題解決に取り組むボランティアとう大義名分は一旦横に置いといて、
実際には役に立っていない、とか、遊んでいる、とか、税金の無駄遣い、とか・・・そういう意見も置いといて
青年海外協力隊に参加した人が、日本という国にどんなメリットをもたらすかをもう少し考えてほしいと思います。
私は青年海外協力隊という事業の意義は「途上国の困っている人たちを助ける事」とはもっと別のところにあると思っています。
協力隊に参加した人の全てが日本に恩恵をもたらすとは言いませんが、協力隊に参加することでしか得られない経験を持った人たちだからこそ、日本に貢献できる事は必ずあります。
私の考える、青年海外協力隊に隠された意義や本質に関しては他の記事で書いていますので、興味があったら是非読んで下さい、
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国内の課題に取り組む為に日本国内に留まることを否定する訳ではありませんが、
海外に出る=国内の問題を後回しにする
という事は必ずしも当てはまるとは限りません。
日本の抱える問題に取り組む為には日本国内にいる必要があるという訳ではない、という事ですね。
海外にいても日本の為に出来る事はたくさんあります。
まとめ