今回は、青年海外協力隊が派遣される地域の風土病である「狂犬病」をテーマにお話しします。
日本ではあまり馴染みのない「狂犬病」。名前くらいは聞いたことがある方も多いと思いますが、その恐ろしさはあまり知られていないようです。
実を言うと、狂犬病はごく一部の国を除いた世界中のほとんどの国で感染する可能性があり、
なんと年間5万人上の方が亡くなっている、恐ろしい病気なんです。
どのくらい恐ろしいかというと・・・・
特にアフリカやアジアでは年間何百人、何千人も狂犬病で命を落としている国がたくさんあります。
青年海外協力隊では派遣前訓練時に狂犬病の予防接種を行いますし、狂犬病についての知識もしっかり勉強しますが、
アフリカや東南アジアなどに長期渡航予定があるなら狂犬病対策は必須です。
ここでは最低限知っておくべき狂犬病対策についてお話します。
狂犬病とは一体どんな病気?
狂犬病は日本には馴染みのない病気ですので、「病気を持った犬に噛まれたらヤバイ」程度の認識の人が多いのではないでしょうか。
まあ、狂犬病はウイルス性の伝染病ですので間違いではありませんが、意外と「重要な事」が知られていないようですね。
狂犬病に関する重要な事。それは・・・
・感染して症状が出たら、100%命は助からないと言うこと
・犬だけでなく、ネコやネズミ、猿、コウモリなど全ての哺乳類から感染する可能性があること
です。
医学の発達した現代において、100%助からない病気、ってちょっとゾッとしますよね・・・
まず「助からない」ということをしっかり認識するだけでも、大きな予防になるかと思います。
そして、狂「犬」病とは言っても、犬以外から感染する可能性があるということも併せて覚えておきましょう。
全ての哺乳類に感染の危険があります。
狂犬病に感染している動物の唾液には大量のウイルスが含まれています。噛まれるだけでなく、舐められて傷口からウイルスが入り込む可能性もありますので、海外では動物に近づくこと自体が危険であると認識するべきですね。
どんなに動物が好きでも、野良犬・野良猫なんて絶対に近づかないこと。
超大事です。
狂犬病の予防接種について
狂犬病の予防接種
狂犬病にはワクチンがありますので、「予防接種」がまずは大切な狂犬病対策になります。
通常は4週感覚で2回、更に6~12ヶ月後に追加接種をします。海外に長期滞在予定であれば、日本で2回受け、渡航後に現地で1回受けるのが一般的かと。
青年海外協力隊では派遣前訓練で2回、派遣国に渡航後1年のタイミングで1回摂取することになります。
これは狂犬病に限りませんが、一般の方が開発途上国に渡航する場合は日本で予防接種してから渡航するのが一般的だと思います。
日本で予防接種する場合は、事前予約が必要だったり、摂取できる曜日が限られていたりと何かと時間がかかる場合が多いですので、出発前に慌てないように余裕を持って予防接種を行うようにしましょう。
万が一の場合は「暴露後接種」
そして、万が一狂犬病の恐れのある動物に噛まれた場合にも、ワクチンを摂取する事を覚えておきましょう。
これを「暴露後接種」と言います。
狂犬病は発症したら命は助かりませんが、狂犬病には潜伏期間がありますので、発症する前に暴露後接種を複数回行えば助かるということですね。
潜伏期間は1~3ヶ月が一般的ですが、1週間という短い期間で発症するケースもあるそうです。
近くの民家の飼い犬と遊んでいて、何かの拍子にちょっと噛みつかれたり、というケースは思いのほかあります。
飼い犬のように「どこから見ても健康で、狂犬病に感染しているとは考えられない」としても、命に関わる以上「多分大丈夫」はNGです。
動物にかまれたら、傷口を石鹸と水で洗い流し、必ず病院に行くようにして下さい。
いずれにしても、スピード命です。
実際に途上国での野良犬から狂犬病に感染して命を落とす旅行者もいますので
海外ではなるべく動物には近づかないこと、かまれたり引っかかれたりしたら病院に行くことを強くお勧めします。
狂犬病関連の英語
英語で狂犬病をなんと言うか応えられる方はそれほど多くないでしょう。
現地の病院で説明できるように、関連する単語は押さえておくことも大切です。
今はスマホですぐに検索できるのであまり心配する必要はありませんが、一応紹介しておきますね。
狂犬病 Rabies
狂犬病ワクチン Antirabies vaccine
注射 injection
日本人の発音では伝わりにくい単語でもありますので、スマホで検索して字を見せた方が確実かもしれません。
信用できる病院は予めおさえておくことも、特に途上国では必須です。
狂犬病に感染している犬の症状は?
主な症状
ちなみに狂犬病に感染している犬にはこんな症状が見られます。
・遠吠えをする
・むやみにウロウロする
・嘔吐する
・普段噛まないような物を噛む
・水を飲み込めなくなる
・大量のよだれを垂らす
・まっすぐ歩けない
ちょっと様子がおかしい場合は感染を疑ったほうがいいですね。
開発途上国での動物との関わり方
私自身、開発途上国で犬に吠え回され、追いかけられた事が何度かあります。
全部「番犬」です。飼い犬ですね。
門に近づいたり、誤って敷地に入ったりしたら攻撃してきます。幸い噛まれたことはありません。
吠えて追いかけてくるだけで噛んでくることはそうそう無いかと思いますが、(それだけでも相当恐ろしいですが)特に地方などでは血気盛んな犬が放し飼いになっていることも多いので十分気をつけましょう。
反対に野良犬の方がおとなしい印象があります。
僕はランニング中などによく野良犬を見かけましたが、狂犬病の恐ろしさを知っていたので恐怖を覚えて一切近づいたことはありません。
とにかく・・・
外国では特に野生動物には安易に近づかないことが鉄則です。
野良犬や野良猫を飼いたい、なんて思った場合は(実は協力隊でもこういう人結構います)
必ず対象の動物にもワクチンを接種するようにして下さい。
繰り返しになりますが、
狂犬病が発症したら助からない病気であることは
狂犬病に感染する恐れのない日本ではあまり知られていません。
このことを認識するだけでも、大分意識が変わってくるかと思います。
まとめ
現代ではアフリカや東南アジアなどの開発途上国も、個人でも気軽に渡航できる時代となりました。
確かに誰もが気軽に行けるようになり、身近な存在になりつつある一方で
このような風土病に対しては知識を持たず、対策を立てずに渡航する人も実際少なくないでしょう。
途上国では犯罪被害や交通事故に巻き込まれる可能性も高いので多くの人はそちらに目が行きがちですが、風土病に対する対策も絶対に必要です。
これらは油断せずにしっかりと対策していれば十分防げることです。
まさしく「油断大敵」だと思いますので、十分に気を付けて下さいね。